なぜ「話がかみ合わない」人がいるのか?
仕事でもプライベートでも、大抵身の回りに一人くらいは「この人とはなぜか話がかみ合わないな」と感じる人がいるものです。
自分「先日初めて海外旅行に家族で出かけたんですよ」
話し相手「私も学生時代にはよく海外旅行に出かけましたよ。当時は今よりも航空券が全体的に高くてね。アルバイトしながら行きたい国までの渡航費を必死に稼いだもんでした。一番印象的だったのはニューヨークかな」
自分「ニューヨークですか。私が行ったのはロサンゼルスでした。ハリウッドはやっぱりすごかったです」
話し相手「アメリカは治安が悪いところが多いからね。私が地下鉄に乗ったときなんて後ろから数人の男がついてきたことがあって。あれは怖かった」
自分「???(なんか話がかみ合わないな…)」
こんなふうに、相手と一応は会話をしているようなのになぜか言葉のキャッチボールができていないというちぐはぐなやりとりになってしまうということはよくあります。
最近では大人のアスペルガー症候群など発達障害によるコミュニケーション不全の問題が取り上げられることも増えてきましたが、はっきり病気というわけではなくとも日常のコミュニケーションがうまくとれないことを悩みに思う人は多くいます。
上記の会話のような会話の齟齬が生じてしまう原因は、会話をするときにお互いに相手がその会話で相手とどういうポイントについて意見を交わしたいかを誤解しあっているということです。
自分としては相手に会話をふるときに「自分は海外旅行に行った」ということを報告するとともに、そのときの様子を紹介しようとしているわけです。
しかし相手は「海外旅行」というフレーズだけを受け取り、自分自身の海外旅行に関する思い出の話を相手に聞かせたいと思ってしまっています。
人は言葉の背後に無数の意味をもたせている
人と人との会話の難しさは、この実際に口にした言葉の裏側にある意図や意識がそれぞれ異なっているというところに起因します。
例えば「駅前に新しいレストランができた」という情報一つをとってしても、人によって「食べに行きたいな」と思うかもしれませんし、別の人は「それまであった店が潰れて残念だ」というふうに受け取るかもしれません。
どんな人であっても一つの情報としての言葉を発するときにはその裏側に関連する体験や記憶を持っているわけですから、それをどう次の会話につなげていくかという道筋もまた異なってきます。
かみあった会話をしていくためには最初に会話の種を振った時に、そこからどんな反応を期待するかを予測して話をしていくことが大事になります。
相手との立場の違いなどにもよりますが、会話を成立させるためには自分の言葉のどこに相手が反応を見せてどこに興味を持ったかということをよく見て、そこから次の言葉を選んでいくという技術が必要になってきます。
最初はまずは共感を得ることから
とはいえトークの才能を持っている人でもないかぎりは相手の反応から次のセリフを考えて変えるというのは簡単にできることではありません。
そこで当面相手との会話にズレを生じさせないためには、まずは相手の言葉を全面的に肯定するというのがよい方法となります。
相手「昨日病院に行ったんですよね」
自分「へえ、病院に行ったんですか。どうして」
相手「ここ最近風邪が流行ってるし具合が悪くて。薬をもらってきました」
自分「そうですね、風邪が流行ってますもんね。薬があれば安心できますね」
といった感じで、次の会話に自分の意見や経験などを挟まずに相手の言葉をそのまま肯定していくようにすると自然に話の道筋や相手が話したがっていることが見えてきます。
またもし会話の途中で間ができてしまったり、相手が居心地悪そうにしているようならいっそのこと会話そのものを切り上げてしまうというのも有効です。
会話のキャッチボールは無理やりやろうとしてもできるものではありませんので、どうしても合わないという人とは踏み込まない距離でだけ会話をしていくというのもありです。